エッセイ私と桜
 

異国のサクラ

 
黒部商工会議所 専務理事
辻  武
 

いつも私たちに、とっても楽しいお話しを聞かせてくださる、黒部まちづくり協議会の理事も務める辻さん。

こんなところにも‥と思う場所でめぐり逢う桜に、優しさや力強さを感じますよね。

病床の窓から見えたアトランタの桜

 2年前の3月にアメリカ合衆国ジョージア州メーコン市へ行く機会があった。

 3月にメーコン市では全米でもかなり有名になった「サクラまつり」が開催され、それに合わせて行われる黒部・メーコン両市姉妹都市提携25周年記念式典に参加するためであった。

 これまでにはメーコン商工会議所との親善交換訪問もあり、そのときにメーコン市のまちづくり等について意見交換をし、共通の悩みを聞いていたことから、何人かの仲間と本隊から一週間ばかり早く渡米してメーコン市とその周辺のまちづくりの視察を計画した。

 ニューヨークのテロ後ということでの厳重チェックに驚き、こんなことまでと思いながらの出国であった。

 出発前に年度末の仕事に忙殺され、疲れもあってか風邪をひいてしまった。それでも薬を飲み、点滴を受け、何とか治まったかに見えたのであったが、成田を離陸してから体調に変化が出て、全く食欲がなくなってしまった。アメリカへ着いてからも何とか気力で第一日目の「メーコンサクラまつり」のオープニングには参加できたが、その夜に40度近くの高熱と激しい咳のためにダウンしてしまった。

 残念ではあったが、視察を諦め、後ろ髪を引かれる思いでみんなと離れ、アトランタに戻って日本人医師の診察を受けた。病名は「急性肺炎」。マニュアルにしたがって薬を飲み、絶対安静で4日後にもう一度診察するとのこと。

 それから、実に長い長い不安な4日間のホテルのひとり住まいが始まった。いろいろなことを考えさせられた4日間でもあった。そしてやっと少し元気が出てきた2日目だったか、窓外の駐車場の向こうに一本のサクラがあることに気がついた。

 誰も話し相手のいないとき、どれだけあのサクラに元気づけられたことであろうか。もし、花の季節でなかったら気づくこともなかったであろうに…。

 メーコン郊外の住宅街に咲き誇る数えきれないくらいたくさんのソメイヨシノもすばらしかった。しかし、私にはアトランタのホテル前の木立の中でただ一本一生懸命に咲いてくれていたサクラが忘れられない…。 
 

トップページへ戻る