エッセイ私と桜
 

釧路湿原にて

 

くろべ漁協代表理事組合長

松野 均

真ん中のダンディな紳士が松野さん。黒部市観光協会副会長、黒部まちづくり協議会副会長も務め、 社業の傍ら、私たちが住む普段着のまちを改めて見つめなおすという観点で、まちづくり活動に精力的に取り組んでおられます。
松野さんが感動した釧路湿原

 昨年の6月、釧路の近傍を1人散策する機会に恵まれ、ノロッコ列車()で釧路湿原を訪れた。その日は前日の霧が嘘のように消え、素晴らしい日よりであった。釧路湿原駅で降り、細岡展望台を巡り、次の駅の細岡駅まで一気に歩き、勢い余って達古武湖キャンプ場までの小径の散策というおまけまで付いた。所々に桜が咲き、春の息吹と鳥のさえずりを満身に受け、清々しい歩きをさせていただいた。
 無人の細岡駅で帰りのノロッコ電車を待つほんのひと時の間、山菜採り帰りのお年寄りと会話が弾んだ。釧路湿原の素晴らしさを強調したところ、「冬の厳しさを知らないからだ」とご老人。細岡駅の線路を挟んだ山手の方に猫の額ほどの平地があり、こんな所に別荘でも建てればいいねと言ったところ、「ここにいい町があったんだ。たくさんの人が住んでいたんだ。桜もたくさん咲いていてきれいだった。にぎやかな桜祭りもあったんだ」と懐かしそうに語り始めた。
 原野の枯れ木と思っていた木々をよく見ると桜の枯れ木であった。「ほれほれあすこに石段が・…、石段の先には神社がある」。驚きと込み上げるほろ苦さとで次の言葉が出なくなった。
 時代の流れがあったにせよ、そこに住む人たちの気持ちがバラバラになると、どんなに素晴らしい町も瞬く間に原野に帰る。私たちのまちに代えれば、一人一人がまちづくりに大きな夢を持たなければ、すぐにでも松林に帰るのかもしれない。
 ノロッコ列車に揺られながら、故郷、黒部まちづくり協議会の活動の意義深さに思いを馳せた一時でした。

*ノロッコ電車
日本一スピードの遅い列車。窓の外を流れる景色をゆったりと楽しむことができます。
これなら川面に遊ぶカヌーや水鳥たち、湿原に暮らすキタキツネやエゾシカたちにも出会えるかもしれませんね。


 

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