エッセイ私と桜
 

お江戸の桜

 

黒部市国際文化センター・コラーレ運営委員

能登恭子

娘さんと一緒に新宿御苑で花見。桜をバックに、はいチーズ!楽しそうな雰囲気が伝わってきます。

お江戸の桜。今年は特に一生忘れられない花見となりました。

 桜の花には不思議な力があります。一つの花の動きが、これほど私たちの暮らしの中に根ざし、人々の心情を重ね合わせて心を動かす花はないのではないでしょうか。特に長い冬を過ごす北陸に住む者には、春が来て桜の花の下に立つ事には特別な喜びがあります。
 4月5日のテレビの開花予想では、お江戸の桜は満開との事。女優であり陶人形作家の結城美栄子さんが、国立近代美術館の「今日の日本芸術展」に出品されるとのお誘いもあり桜に魅かれて上京しました。
 花のお江戸というように、東京は桜の真っ盛りでした。代々木公園の桜は若木が多く乙女のように恥じらいながら咲き、上野公園や井の頭公園の桜は人出が多く花見宴会でにぎわいながら咲きます。代官山から目黒川沿いの桜並木は、静かでロマンチックに。新宿御苑は、桜の種類が多く一ヶ月以上楽しめるのではないでしょうか。
 そして、皇居周辺の千鳥ヶ淵や四谷の外堀提の桜並木も素晴らしく、いかにもお江戸の桜の風情があります。皇居のお堀に映える花の枝、木漏れ日で変わる色の濃く淡く、そして静かに散る桜は見る人の心に合わせてくれるのです。
 竹橋の美術館で結城さんの作品を鑑賞してから皇居の桜散策をしました。皇居乾門の前のしだれ桜が、真珠のような雨に濡れ、ほのかにふくらみ柔らかな色を見せていました。偶然その時、皇后様が公務からお戻りになられるところでお目にかかれたのです。
 私たちが思わず「皇后様」とお声をかけますと、静かにお車の窓が下がり「はい」とお返事下さいました。桜の花のようなやさしいまなざしで微笑みかけて下さったのです。私の心はほのぼのと淡い桜色になり、そっとお車をお見送りしました。
 こんな感動的な偶然はあるものなのでしょうか?一生忘れる事のできないお江戸の花見となりました。


 

 

トップページへ戻る