2002年2月14日

 

「桜咲く牧場へ」

新川育成牧場組合事務局長 稲場仁一
 

サクラワークショップの良き理解者の一人でもある稲場さん。植樹後はいつも牧場特製アイスクリームを差し入れてくださいます。

 新川育成牧場は昨年、開牧30周年を迎えました。その記念として、組合を構成する魚津、黒部、滑川、宇奈月の3市1町長の手でしだれ桜が植樹されました。牧場では平成10年以来すでに千本を越える桜が、サクラワークショップのメンバーや、黒部市や宇奈月町の小学校卒業生と家族の手で植樹されています。
 雑草の中に埋もれ、弱々しく風に吹かれていた幼木も、2年を過ぎると大地にしっかり根を張り、存在感が出てきます。最初に植えられた木々の中には、少しづつ咲き始めるものもあり、年ごとにその数を増し、枝ぶりも立派になっていくのを見るのは、とても楽しみなものです。植樹された方々の気持ちも同じでしょう。この木には、それぞれの思い込められています。
 桜が咲く4月から5月にかけては、牧草の若葉が美しく、最も牧場らしさを感じる季節です。毎年5月3日から5日にかけて行われる新川牧場ファームフェアは、穏やかな春の1日をのんびり緑の中で過ごす地域の行事として定着しつつあり、今後桜の木々の成長とともに発展していくことが期待されます。満開の桜の木の下で開くバーベキューパーティーは最高でしょう。牧場では、この春のイベントのほか季節ごとに特徴ある行事を展開しながら、地域に根ざした豊かな牧場づくりを目指しています。
 仕事やプライベートで各地の牧場や農場などを訪れる機会があります。由緒ある牧場には、事務所までのアプローチに立派な並木があることをいつもうらやましく思って見てきました。幾十年も前に植えられ、その牧場とともに成長してきた木々の姿には、その歴史とともに、ずっしり重い風格を感じ圧倒されます。新川牧場の桜並木は、いまようやく植えられたばかりのかわいい並木ですが、今後30年、50年と時の経過とともにあのような立派な並木に育つことを想像すると、胸が躍ります。
 かつて灌木が生い茂る台地だったこの地を牧場として造成するため、たくさんの木が切られ、幾千年の歳月を経て形成された表土を失ってしまいました。それを再び取り戻すことは不可能ですが、地形を整え、草の種を播き、木々を植えて新たな植生を維持することは、豊かな風土を守る意味で大切なことだと感じます。
 たくさの人々の力によって植えられた桜の木は、この牧場から眺めるふるさとの風景とともに、地域にとってすばらしい財産です。すこやかな桜たちの成長を見守りたいと思います。