エッセイ私と桜
 

宇奈月の桜と詩歌

 

宇奈月町長

中谷 延之

平成2年8月〜宇奈月町長。全室個室の特別養護老人ホーム「おらはうす宇奈月」、「宇奈月麦酒館」建設など、福祉、農業観光振興などで先進的な施策を次々展開しておられます。現在は、1市3町の合併実現に全力を注ぐ日々です。
  古来、桜は日本人の心を捉えてはなさない花の代表であります。しかし、私個人としては特別桜の花との思い出がありませんので、町内の桜とその桜にまつわる詩歌について紹介します。
 町には、浦山の鶏野神社境内にエドヒガン桜で「月訪いの桜」があります。775年(宝亀6年)時の国司、大伴家持がこの地を訪れた際お手植えしたと伝えられており、現在の木は二代目と言われております。そこには、家持の詠んだ「鶏の音も 聞こえぬ里に 夜もすがら 月よりほかに 訪う人もなく」の歌碑が建立されており、「月訪いの桜」命名のいわれとなっております。また、この桜は町の天然記念物に指定されております。
 もう一箇所は、明日の法福寺の境内にある「明日の大桜」であります。これもエドヒガン桜でありますが県天然記念物の指定がされております。4月18日の観音祭りで稚児舞が奉納される頃が満開で、淡いピンク色した華やかで優美な花を楽しむことができます。相馬御風がこの桜を賞して「ほのぼのと 山の桜の咲くみれば 神代ながらの心地こそすれ」と詠んでおりますが、歌碑はありません。
 そこへ、今年4月18日に朝日町出身の画家、松田郷人さんが大桜の下に源氏鶏太選による自作「一切は 空と知れども 桜かな」の俳句碑を建立されました。相馬先生の歌碑をさしおいての感もありましたが、趣のある俳句でありましたので、この大桜に相応しいと思い祝辞を申し上げました。その祝辞で西行の有名な桜の詩「願わくば花の下にて春死なむ その如月の望月のころ」を引用し、日本人の桜への思い入れが共通して感じられると述べたのですが、ご本人は誉めすぎと恐縮しておられました。
 宇奈月ではこの他、宇奈月公園も名勝でしたが、老木が増え昔の面影は見る影もありません。桜の咲く頃になると花見情報が出されますが、宇奈月公園には桜がないじゃないかと文句をいわれております。
 現在は宇奈月谷周辺、もうすぐ宇奈月ダムへの途中が桜の見所となります。もちろん、新川牧場も暫くすると一大名勝になることでしょう。


 

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