エッセイ私と桜
 


「富山県の人々との出会いと別れ」

 
  津保護観察所長  小野 淳子
 
 


富山ではたくさんの思い出があるという小野さん。桜とともに富山のこと忘れないでくださいね。

  平成12年4月、富山保護観察所に赴任した時、テレビはしきりに松川や磯部の桜の開花情報を伝えていた。開花は例年より遅いらしく、呉羽山から雪を頂く立山連峰を背景にした富山の桜を一人眺める贅沢を味わった。
 初めての富山の気温はまだ冷たくても、人々の心は温かく、その後2年の間に県内あちこちに素晴らしい出会いをいただいた。その一人、佐伯さんから、桜にまつわる思い出を書きませんか、とお電話を頂いた時、すぐに脳裏に浮かんだお世話になった方々との様々な思い出、その上『黒部まちづくり協議会の活動』とお聞きしては、辞退する理由はなかった。
 黒部市で唯一の民間保育所を開設した岩井恵澄さん率いる更生保護婦人会の皆様とのふれあいは楽しくも誇らしい。『ふれあいと対話が築く明るい家庭づくり』を掲げて、地域の関係諸団体と連携して『子どもを育てる』ために、ピンクのスカーフを胸に軽やかに活動している女性ボランティアの会である。活動の拠点とも言うべきコラーレの素晴らしいこと、その図書館では、立山に見守られながら悠々と勉学に励む高校生達がいた。毎年4月には、ワークショップの植樹する桜が彼らの前途を祝福して咲くのであろう。きっと郷土黒部のために働く大人に成長するに違いない、と今確信する。
 最後の日、90歳になる名誉保護司を福岡町に訪ねた。途中の山や川辺に咲く桜の美しさに誘われて立ち寄った高岡市水道公園では、白く霞がたなびくように静かに満開であった。案内してくださったNご夫妻と共に忘れられない桜である。
 今年例年より早く開花した桜は、新任地へ向かう私の背中を押す惜別の花となりいつまでも心に残るものとなった。

 

 

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