「真夏の花見」

 
財団法人富山県民福祉公園 県民公園課係長 上原恵
 
 


総合運動公園、太閤山ランドなどの管理を担当し、94年には県内都市公園で初のオーバーシーディングを実施した上原さん。同じ桜でも、上原さんの目を通すとまた違った魅力が見えてきます。

 平成14年3月末、姫路城を訪れた私は、天守閣下の櫓窓から地面が見えないほどに城内を埋め尽くす満開のサクラを見て、思わず「あぁ…」と声にならない声を漏らしました。世界文化遺産に指定されている別名白鷺城本体よりも、その日は何よりサクラが主人公になっていました。
 日本人の心に大きな感動と安らぎを与えるサクラも、県立都市公園の管理運営に携わる私自身の中では少し違って映ってきます。維持管理の面からは「虫がつきやすい木」、財産管理の面からは「適切な更新計画を要する木」であり、また、「ウソが来て芽を食べてしまわなければよいがなぁ」といったように、心配事の尽きない存在でもあるのです。
 害虫、特に鱗翅目の幼虫が葉を食い荒らす被害は時として甚大なものになります。薬剤散布を実施する公園等ではめったなことは起こりませんが、中小河川の堤防や鎮守の森などに植えられたサクラでは、夏過ぎにモンクロシャチホコという蛾の幼虫が大量 発生して一帯のサクラが丸裸になってしまう光景が、毎年、同じ場所で観察されます。彼らは葉を食い尽くしたその木に産卵・越冬し、次の年にまた同じような被害をもたらすのです。
 それでも、しばらくして芽を吹き返してくるサクラを見るとき、その生命力には満開のサクラとは別の感動を覚えるものです。そしてその時期、私には密かな楽しみが待っています。それは「狂い咲き」の花見です。すっかり葉をなくしてしまった木々は、新芽を吹く直前に「春が来た」と勘違いするのでしょう。たまに一つ、二つの花をつけます。みなさんも、夏に丸裸になったサクラを見つけたら探してみてください。めったに見ることのできない生命の不思議を実感できますよ。