2002年1月17日

 

「桜と子供たちの成長を見守る」

黒部市立若栗小学校長 吉崎嗣憲
 

筆者の吉崎嗣憲校長。サクラワーショップの第1回目の植樹から、子供たちとともに桜を植えている

 今、高校1年生になっている子供たちが最初に桜の苗木を植えてから、もうこの植樹も5年目になる。
 みぞれ混じりの手のかじかむ中で植えた年もあれば、小春日和のよいお天気をいただいたときもある。どの子供たちも、自分が家族と一緒に植えたこれら桜の木を眺めるなど大切にしている。桜の生長が楽しみだという。
 私たちもそうである。桜の木とともに子供の顔が浮かんでくる。
 何かの記念に植樹することは、古くからどの民族ももっている素晴らしい習慣である。それぞれに思いを込めて、苗木を植える。市民がこれを機会にして、桜だけでなく他の木も植えるようにしたいものである。
 そのとき、周りの様子だけでなく、黒部市の全体の風景が変わるような気がする。心象的な風景ではない。近未来にはヨーロピアンの社会にはない、より落ち着いた自然を人の生活の中に取り込んだ黒部市になり、いかにも日本という風景を作っているだろう。
 ニュージーランド、クライストチャーチはガーデンシティとも呼ばれるが、どの町を見ても単なるヨーロッパの都市と違う雰囲気がある。それぞれの家で丹誠込めて作っている庭を巡るツアーがある。サマータイムの時期には、仕事後の数時間を庭の手入れに精出す人々がいる。「よき家庭」を築こうとする人々の長い間に醸成された考え方が、そういう穏やかな生活観を醸し出す町の特徴を作るのだろう。
 人の欲望というのは限りがないようである。その一つに、「豊かな生活」をしたいということがある。私たちは、その分を知り、日本人なりの「豊かな生活」に対する考え方をもつべきであろう。私たちは、物が余りすぎるという時代に生きている。これ以上に物質的な豊かな生活を望み、さらに、西欧の生活スタイルを求めようとするのだろうか。それよりも、今の生活を深めるようにしたい。
 短命なソメイヨシノではなく、長生きするエドヒガンなど何種類かの桜を植えるという。子供たちが一人立ちする時には、新しい日本の生活風景ができるだろう。桜の生長とともに、子供たちのそれぞれに羽ばたく力強さを見たいものである。