2001年12月1日

 
「世代越え、心つないで」
サクラワークショップリーダー 堀内 康男
 

佐野藤右衛門氏とともに
シンボル桜を見る著者 

 空いっぱいに広がった枝は、まるで私たちを包み込んでいるように見えた。今年4月に訪れた岐阜県根尾村の淡墨桜のことだ。
 宇野千代の小説で一躍有名になった古木は、「淡墨桜」の名の通り本当に淡い墨色をしていた。だが、さすがに一人で立つこと難しいらしく、多くの支え棒がしてあった。
 樹齢1500年という年月に、桜を生き長らえさせた人々の苦労を思う。老朽化や台風被害などで何度も枯死寸前になり、切り倒されそうになったが、地元の人々の熱意がこの桜を守り続けてきた。今では人口2,300人の村に、毎年25万人の観光客が桜を見に訪れる。さながら「桜の恩返し」だろう。
 私たちの植樹運動は今、始まったばかりだ。これまでにシダレやエドヒガンなど約3000本の植樹をしてきたが、この桜たちが風雪を乗り越えて元気に育つには、運もあるが、多くの人々の世話に頼るところが多いと思う。
 立派な大木に成長するにはおそらく数十年の月日が必要だ。今生きている私は、見ることができないかもしれない。だが長い年月に耐えて咲かせた花は本当に美しいだろう。それまでに、自分も含めた多くの人が橋渡しをして桜を育てることを思うと、支え合って生きる大切さを感じる。
 世代を越え、心をつないで、故郷黒部でこれらの桜を何百年も見守り続けることができたら素晴らしい。